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マタリキ・昴・勾玉・猿田彦(1)

Matarikiーマオリ新年・祝日元年


今年2022年、NZで初めて"Matariki" (マタリキ=マオリ新年)が国の祝日に制定されました。

昨年までも、「マタリキ」はマオリ族だけでなくNZ中の大きなイベントで、マオリ族の伝統儀式の他に、誰でも参加できる様々な地域イベントが催されていました。でも、National Holideyではなかったのです。ジェシンダ・アデーン首相が公約にあげていたことが、ついに実現したわけです。

これは、世界初の「先住民の新年」祝日だそうです。

 

 

「マタリキ」とはプレアデス星団のマオリ名で、日本語では昴(すばる)です。

マオリ語の「マタリキ」は、「神の目」という意味があって、特別に神聖な星(星団)とみなされています。

プレアデス星団にはギリシャ神話の7姉妹の伝説がありますが、マオリは9つの星と見て、それぞれに名前がついています。日本では6つの星を数えることが多かったようで、昴の別名は「六連星(むつらぼし)」。

画像は マオリ名の9つの星(Wikipediaより)。それぞれが自然界のパワーや現象を司っています。

 

画像で見ると、本当に美しい星の集団ですが、実際の夜空では、周囲に明かりがない暗い空で、視力のいい人でないと見つけられないくらいのボワンとした塊で、決してパッと明るく自己主張している星団ではありません。

かく言う私自身も視力がかなり悪いので、残念ながら、まだ昴を肉眼で見たことがありません。「マタリキ」新年の機会に一度見てみたいと思っているのですが、これがなかなか難しい。

昴の見つけ方の説明をいろんなサイトで見ると、オリオン座を見つけて(これは間違いなく見つけられる!)、その3つ星ベルトの延長上の一等星の明るい赤い星=おうし座のアルデバランと側にあるヒアデス星団を見つけ、さらにその線を延長するとプレアデス星団が見つけられる……ということです。

 

さて、問題は、NZが位置する南半球では、季節が日本と逆。

マオリ新年の冬の空に見えるのは、オリオン座ではなく、サソリ座なのです。いうまでもなく、オリオン座とサソリ座は同じ空に一緒に上がることがない……というのが、ギリシャ神話でその理由が語られている所以ですね。

しかも、オリオン座が見えても、南半球では「逆さオリオン」で、日本とは見え方が逆になるので、アルデバランの反対側のシリアス(天体中で一番明るく見える青白い一等星)はすぐに見つかるのだけど、アルデバランとその延長にある昴の位置が低くて木の陰に隠れたりすることが多いのかな?

 

マオリ新年の暦の定め方で、「冬至の後、後半の半月(three quarters)=日本風に言うと下弦の月から新月まで」の時期が「新年」とされていて、Three quarters月の日が、今年は6月24日、この日が祝日となったわけです。

月の暦ですから、毎年、「Matariki」祝日の日付は変わります。

冬至と月の満ち欠け、そして、昴の位置。

ほとんど一年中空に姿を見せる昴が、南半球のオーストラリアのほとんどのエリアやNZでは、4月半ばから6月半ばまで地平線の下に隠れて見えない期間があるそうです。昴がこのエリアで再び姿を表すのが6月後半。但し、太陽と同じ軌道にあって、太陽に先立って夜明け前のほんのわずかな時間だけ見えるのです。

だから、マオリ新年の儀式は、夜明け前の海辺などで行われます。内陸部のロトルアでも、ロトルア湖畔で5amから儀式が行われました。誰でも参加できるのですが、その前日にイベントの準備で徹夜していた私は、さすがに早朝5amの行事には行けず、爆睡していました。

 

こんないろんな条件が絡んで、マタリキ=昴を実際に見るのは、なかなか難しい。

いつか、きっと……気持ちだけは持っておきましょう。

 

仮に見つけやすい位置にあっても、近くのアルデバランやオリオン座の星たちやシリウスに比べて、光の弱い星団。この昴を特別に神聖視した昔の人々は、視力が素晴らしく良かったのですね。

マオリ族の先祖は、大カヌー団で太平洋を渡ってきた海洋族だから、視力の良さは抜群だったのでしょう。

 

太古の日本でも、実は、昴は特別な星と見られていました。

なぜ、マオリにとっての「マタリキ」が特別であり、古代日本にとっての「昴」が特別だったのか? この深〜い繋がりを、次回以降のブログで検証していこうと思います。

 

 

 

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