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マタリキ・昴・勾玉・猿田彦(3)

すばる時ー“新年の言祝ぎ” 生命の終焉から再生へ


「すばる時」という日本語があります。

 

17年前の私たちのNZ移住が6月初め、その後まもなくマオリ文化にとっての「マタリキ」の重要性を暮らしの中で実感し、「マタリキ」=プレアデス星団と知って、ああ、日本語の昴だ、と思った途端、日本とマオリの只ならぬ繋がりに気づいたのです。

それは、「すばる時」という言葉を私が知っていたことによる閃きです。

 

 古代日本では、昴が農作業の時期の重要な目安になっていました。

「すばる時」とは、昴が夜半に南中する時、この時期に蕎麦や麦の種を蒔けば、豊作になると言い伝えられていたそうです。この時期は、今の暦では1月下旬頃、旧正月の時期に当たります。

NZの「マタリキ」=マオリ新年も、真冬から来たるべき新しい生命の季節に向けて、農作物の植え付けの準備などをする時期です。

 

右の画像は、「すばる時」のイメージを刺し子で表現した私の作品です。題して「すばる時ー天地言祝(あめつち ことほぎ)」。大地と空の星々、すばる時に祈りを込めて撒かれ、やがて豊かに実る穀物。

下の画像は、ポールのペイントで、星夜と樹々のイメージ。2人の作品は、「マタリキ」祝日までの6月の3週間、ロトルアの「アーツ・ヴィレッジ」で開催された展示会に参加しました。

 

マオリ語の「マタリキ」は「神の目」として信仰の対象ですが、日本でも昴は特別な群星として信仰されていたのではないでしょうか?

沖縄の伝説は、直接的にそれを伝えています。

ある夜、娘さんが不思議な光が空と地上を行ったり来たりしているのを見ました。その光は、昴から地上に降り、また戻っていくのです。翌日、その話を聞いた村人たちが、その場所に行ってみると、白い丸い輪の印がありました。

沖縄にはそんな場所がいくつもあって、その印の場所を聖なる場所=神を迎える場所「御嶽」(うたき)としています。

沖縄の神はニライカナイ、海の彼方の西の果てに神の国があり、先祖の霊たちもそこにいて、祭りの時に家族の元に戻ってくる……その神と祖霊たちを迎える聖なる儀式の場所が御嶽。これは神の国が西の彼方にあるという水平軸ですが、御嶽の起源が空の昴から来たという伝説は垂直軸の世界観・宇宙観になり、とてもダイナミックな3D世界。

 

 ニライカナイ信仰は、生命と魂の絆・甦りの信仰でもあります。

世界中の先住民族は、ほぼ共通して、同様の信仰を持っています。

日本では仏教の影響による輪廻転生や西方浄土、彼岸、お盆などと結びついた信仰や祭りが多いのですが、その根源には、元々の古代の神々や霊への信仰があり、何層にもいろんな要素が絡んでいることが多いようです。

 

「新年の祝い」とは、真冬(冬至〜大寒頃)に生命の終焉を経て、次の新たな再生・誕生を迎える節目。だから、1年の回りの節目節目の中で、最も重要な儀式。

その後の様々な暮らしの営みに自然界の恵みを受けるために、神を丁重にお迎えして祀る儀式。この新年の儀式によって、神(神々)・霊たちと人々との絆も結び直され、新たなスタートとなる。

日本語の「昴(すばる)」は、「すまる」「すべる」(=まとまる・まとめる・むすぶ)という語が起源と言われています。この「結び合う」という意味の重要さ・深遠さ。

水平軸・垂直軸に神々・霊たちと人々が結ばれ、地上の人と人とも結ばれ、大地自然とも結ばれ、陸や海の生き物たちとも結ばれ、植物たちとも結ばれ、それらが全て1年の一巡りの輪につながる。

この本質を知る知恵によって、太古の人々・私たちの祖先たちは、昴をそのシンボルとして特別に神聖視したのではないでしょうか。

 

宇宙の結び合いのシンボル・昴をそのまま形取ったかのような、縄文時代の翡翠勾玉のネックレス。

ここから、また古代日本とマオリとの繋がりの旅が続きます。

 

昴に関する日本や世界各地の伝説について、下記のサイトで読むことができます。

「お話歳時記」(すばるの伝説その一/その二)

 

「すばる星空倶楽部」(Vol.04 日本のすばるとその伝説)

 

 

 

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